プロローグ
はじめまして。
おさちと申します。
私の詳細ついては『おさちに幸あれ』というブログをやっておりますので
そちらを見ていただけると嬉しいです。
この『おさちの音楽図書館』は、
私の好きな曲を小説にしてみようというブログ小説です。
一つ一つの音楽には一つ一つ違ったストーリーがあります。
ほとんどの曲は一曲4分ぐらい。
でもその4分にはその人の物語があるのです。
そんなことを小説にできたらなと思います。
また、まだまだ未熟ものですので
温かい目で見守ってもらえればなと思います。
<8> 猫 DISH//
今日、自分は死ぬかもしれないと思って生きている人は何人いるのだろう。
何らかの病気にかかっている人、年を取り、寿命を迎える人。
でもどうだろう。
今、実際普通に働いていたり、学校に行ったりしている人が
もしかしたら今日死ぬのかもしれないと思って生きている人はどれほどいるのだろうか。
人はみんな今というこの時を生きるために必死で、
ただ今日を生き向くためのことしか考えていないだろう。
でも、あなたが今日明日生きているという保証はどこにもない。
そしてまた、あなたの隣にいる人でも同じことで、
みんな明日生きているという保証はないのだ。
いつ死ぬのかなんて誰もわからないのだ。
美香の気持ち俺への気持ちはもしかしたら、もう戻らないかもしれない。
でも、どうしても伝えたかった。
そう決めたのに。
もうこの思いは君には届かないみたいだ。
<7> 猫 DISH//
俺はあれから、自分を偽ることをやめた。
美香がいなくてもやっていけると思うこと。
美香のことを忘れようとすること。
美香への気持ちを隠すこと。
やっぱり、俺は美香のことが好きだ。
その気持ちは変えられない。
君がいない人生つまらない人生なんて送ることができない。
君がいない人生なんて考えられない。
俺は、もう一度、友美に会うことを決めた。
美香のことどれだけ知っているかと聞かれ、
俺は何も答えれなかった。
俺は美香のことを何も知らなかった。
別れを言われても仕方がなかった。
俺は美香から逃げた。
美香のことを俺よりも大切にしてくれる人はこの世界中にどこにでもいる。
美香は俺といないほうが幸せだ。
だから、俺とは別れたほうがいい。
そのほうが幸せだと思った。
だけど、やっぱり、俺は美香が好きだ。
この気持ちは変えられない。
自分は最低だった。
自分のことしか考えてなくて、美香のことを知ろうことしなかった。
だけど、もう一度チャンスをくれるのならば、
絶対に幸せにする。
もちろんまた俺のもとへ戻ってくれるとは思っていない。
でも、これだけは伝えたかった。
俺は、美香のことを愛してるって。
俺はこのことを美香に伝えるために、友美に電話をした。
「友美、俺やっぱ…」
「…おそいよ。」
友美のその声は震えていた。
「美香が、死んだの…。」
<6> 猫 DISH//
俺は、いつも通り会社に行き、いつも通り仕事をしていた。
だけど、この日は、いつもを少し違った。
なんだか、体がだるくて、頭が回らない。
でももう3時だし、早退するほどでもないから今日は定時で帰らせてもらおう。
なんでだろ。
こんな時に限って、美香の顔を思い出す。
君のいない日常に慣れてきたつもりだったけど、
やはり、こんな時は君の顔を思い浮かべてしまう。
会いたい。
どうしてもこの言葉が思い浮かんでしまうのだ。
「お、おい。お前大丈夫か?」
上司が驚いたような顔で俺を見てきて、そう話しかけてきた。
「もういい、今日はもう帰れ。」
「でもまだ仕事が…。」
「いいよそんなん。まあ最近残業続きだったしな。そんなに疲れてたんだな。」
そんなに顔に出ていいたのか。
俺は体調も悪かったし、上司もそういってくれたので早退させてもらうことにした。
帰りの電車の中でも美香の顔が頭から離れなかった。
駅を降り、家まで歩いて向かう。
「おかあさーん、みてー!すっごいきれいだよー!」
そう、小さな子は叫んでいた。
俺は重い頭を持ち上げるようにして前を向き女の子の指さすほうを見ると、
そこには、きれいな夕焼けがあった。
あの日と同じ、きれいな夕焼けだった。
君と約束を交わしたと来た同じ。
俺が夕焼けに見入っていると、女の子が話しかけてきた。
「お兄さん、なんで泣いてるの?」
「え?」
自分のほほに手を当ててみると少し濡れていた。
俺は、自分が泣いていることに気がつかなかった。
「お兄さん、これあげるから笑ってー。」
そういうと女の子は自分のポケットから飴を一つ出した。
俺がその飴を大事に受け取った。
「ありがとう。そうだね、笑わないといけないね。」
そうだ。
美香と約束したんだ。
夕焼けを見た日は何がなんでも笑顔でいるって。
辛くても、悲しくても、泣きたくてもあの日を思い出して笑うって。
<5> 猫 DISH//
あれから何日たったのだろう。
友美とは、あの日以来会っていない。
あの日から俺は変わった。
いや、元の自分に戻ったのだ。
美香に出会う前のごく普通の生活を送っていた自分に。
君がいなくなってから、気づいたことがある。
朝起きれない俺はいつも美香が起こしてくれた。
いつも朝は卵焼きとみそのにおいがしていて、いつも俺が起きる前に準備してくれていたね。
美香がいなくなった最初のころは、全然起きれなくて、
いつも遅刻ギリギリだったけど今ではちゃんと一人で起きれるようになったよ。
でも朝ご飯を作るのはやっぱりちょっと大変で、いつもさぼって昨日の残りのお惣菜とか食べてるけど。
朝起きて歯を磨くとき、いつもすこし手が止まる。
俺の部屋にはまだ歯ブラシはふたつ置いてある。
毎回捨てようとは思っているけど、そう思うだけで捨てはしない。
そして、朝の支度を終え、一人で朝ご飯を食べる。
美香がいなくなってこの部屋がこんなにも静かだったことに初めて気が付いた。
俺はその静けさが嫌で家にいるときはいつもテレビをつけるようにしている。
これも今では当たり前になっている。
俺はだれもいない部屋を出ていき、仕事へ向かう。
ある程度頑張って、ミスしないように、怒られないように、それだけやれば十分だ。
「悪い、この仕事今日中によろしくな。」
「え、今日中ですか?」
「そうだよ。よろしくな。」
今日も残業か…。
家に着くときはもう夜になっていて、
家に帰ったら、すぐに寝てしまう。
最近はいつもこんな生活だ。
君がいなくなっても普通に生活できている。
俺は、友美と話してから、
美香のことを考えるのとやめた。
美香のことを知ろうと思うこともやめた。
だって、美香のことを知ったって、美香が戻ってくることはない。
だから俺は、
君がいないつまらない人生を歩むことを決めた。
<4> 猫 DISH//
俺はさっそく、大学の時の友人、友美に連絡をした。
友美は美香と仲が良く、美香と出会ったときに友美とも知り合った。
友美とは大学卒業後会ってなったから、会うのは3年ぶりくらいか。
美香は、よく卒業後も友美と頻繁にあっていたということを聞いていた。
友美とは大学の近くのカフェで待ち合わせた。
「久しぶり。ひろむ全然変わってないね。」
「友美もな。」
3年ぶりだったが、友美はほとんど何も変わっていなかった。
いつも友美と美香は一緒にいるだけで笑っていた。
その時と変わらない、懐かしい笑顔だった。
カフェの中に入り、俺はなんて言い出せばわからず、二人の仲に沈黙が続いた。
すると、友美から話を切り出してきた。
「美香と、別れたんだって?」
「あ、うん。」
やっぱ、友美に別れたこと話してたんだな。
「今日はなんで美香は別てほしいって言ったのか知りたいってことかな?」
「うん。それもそうなんだけど、美香の大学前の話とか知らない?」
友美の顔つきが少し変わったのが、なんとなくわかった。
しかし、友美はコーヒーを一口飲むといつもの笑顔に戻っていた。
「ひろむ。美香のことどんだけ知ってる?」
美香は笑顔のまま聞いてきた。
「え、何の話?」
「美香の好きな食べ物は?好きな季節は?美香の好きな動物は?」
そう聞かれたとき、
俺は答えることができなかった。
美香が話そうとしなかったのは地元や家族の話だけでなかった。
「あんた美香のことなんも知らないんだね。
美香は過去の話をすることをいつも嫌がってた。
でも、あんたはそれ以前の問題だよ。美香のこと知ろうとしなかったんでしょ。
こんな簡単な質問にも答えれない人に美香の過去を教えられないよ。」
友美はそう言って、立ち上がってどこかへ行ってしまった。
そうだ。違った。
美香が話そうとしなかったんじゃない。
俺が知ろうとしなかったんだ。
美香はおしゃべりでいつも話してた。
でも、いつも俺の話ばかり聞いてきた。
美香は俺のすべてを知っていた。
でも、俺は美香のことをなにも知らなかったのだ。
<3> 猫 DISH//
「あ!かわいいー!」
同棲し始め、美香とスーパーの帰り道、猫がいた。
見た感じ、どこかで飼われている感じではない。野良猫だろう。
「ねー、この子飼おうよー。」
「だめだよ。うちのアパート動物飼えないでしょ。」
「あーそっかー。残念。じゃあ、もーちょっと経ってまた引っ越したら猫飼おう!」
「はいはい。そーだな。」
「うん!やった!」
「残念がったり、すぐ喜んだり、美香って猫みたいだな。」
「それほめてんのー?」
「褒めてる褒めてる(笑)」
美香は俺と違っていつも笑ったり、喜んでたり、すねたと思ったらもう機嫌直ってたり、なんだかんだいつも楽しそうだった。
そんな美香と一緒にいるだけで楽しかった。
でも、美香には少し不思議な部分があった。
それが何かはわからない。
ふとしたとき、なにか悲しいげな顔をしていた時があった。
でも、あまりそれを気にしたことはなかった。
いや、気づいてはいけないと思っていたのかもしれない。
だから、その美香のもう一つの顔について探ろうとは思わなかった。
そのこともそうだが、俺は美香について知らないことが多い。
思い返せば、美香は自分のことについてあまり話そうとしなかった。
自分の家族の話、地元の話。
美香と生活を共にしていたのに、自分は美香のことあまり知らなかった。
美香と別れてもう関係ないのに、俺は美香について知りたくなった。
美香のもう一つの顔を。
<2> 猫 DISH//
俺は普通の人間だ。
普通の家庭に生まれ、
普通に学校に通い、
普通の高校へ行き、
普通の大学に進学した。
その普通の大学で出会ったのが美香。
美香とは友達の紹介で知り合った。
美香は最初からほかの人とは違った。
美香はほかの女の子とは違って、なんかキラキラして見えた。
なんでかはわからない。
よく考えたら、一目惚れだったのかもしれない。
それが俺の初めての恋だった。
初めて、この人と一緒にいたい。
この人の一緒に笑い合いたいって思った。
美香はいつも笑っていた。
美香はいつも笑顔で、俺が落ち込んでいるときも、疲れているときも、泣きそうなときもずっとそばで笑っていてくれた。
俺が、美香に告白したとき、
告白なんてしたことなくて、その時はものすごく緊張していた。
こんなつまらない俺なんかと付き合ってくれるなんて思ってなかったけど、
やっぱり、美香のことが好きだったし、なによりもずっとそばにいてほしかった。
誰よりも近くで笑っていてほしかった。
美香はいつものように、笑って「はい。」って言ってくれた。
この笑顔をずっと守りたいと思った。
告白をした帰り、美香の家まで二人で歩いているとき、
その時は夕方で、きれいな夕焼けが見えた。
「ひろむ。一個約束してほしいことがあるの。」
「なに?」
「夕焼けを見た日は絶対に何が何でも笑顔でいよう。
辛くても、悲しくても、泣きたくても。今日の日を思い出して、笑うこと。」
「じゃあ、夕焼けを見たときは、美香のことを思い出すことにする。」
「うん!夕焼け見てイラついたりしないでよー」
「当たり前だろー」
あの日は今まで生きてきた中で、一番幸せな日だった。
普通の人生ほどつまらないものはない。
そんなつまらない日常を変えてくれたのが君だった。