<1> 猫 DISH//
『 私たち、別れよう。
今までありがとう。
美香 』
そう書かれた紙切れが置かれていたのは3か月前。
朝起きたらその紙切れがあった。
あれから美香からとは会ってもないし、連絡もない。
3か月たった今でも、別れたという実感はわかない。
美香とは、大学から付き合っており、同棲もしていた。
だが、その紙切れが置かれているのを見たとき、
悲しみや怒りといった感情はなかった。
その紙切れを確認し、朝の支度をし、仕事に行った。
俺は卒業後、大手の企業に就職し、とても忙しい日々を送っている。
だから、美香のことを考えることもなく、仕事に熱中していた。
「おい!またミスかよ!最近多いぞお前。気引き締めろよ。」
「すいません…。」
前よりも仕事に集中できているはずなのに、
最近怒られることが多い。
なんでだろう。
「おい、ひろむ。お前美香ちゃんと別れてからおかしいぞ。」
「え?そうか?」
「おう、なんか元気ないっつーか。なんか、つまんなそう。」
同期が急にそう言ってきた。
自分では全くわからないが、他人から見るとそう見えるらしい。
自分でだってわかってる。
自分はずっとつまらない男だ。
今までずっとそうだった。