<4> 猫 DISH//
俺はさっそく、大学の時の友人、友美に連絡をした。
友美は美香と仲が良く、美香と出会ったときに友美とも知り合った。
友美とは大学卒業後会ってなったから、会うのは3年ぶりくらいか。
美香は、よく卒業後も友美と頻繁にあっていたということを聞いていた。
友美とは大学の近くのカフェで待ち合わせた。
「久しぶり。ひろむ全然変わってないね。」
「友美もな。」
3年ぶりだったが、友美はほとんど何も変わっていなかった。
いつも友美と美香は一緒にいるだけで笑っていた。
その時と変わらない、懐かしい笑顔だった。
カフェの中に入り、俺はなんて言い出せばわからず、二人の仲に沈黙が続いた。
すると、友美から話を切り出してきた。
「美香と、別れたんだって?」
「あ、うん。」
やっぱ、友美に別れたこと話してたんだな。
「今日はなんで美香は別てほしいって言ったのか知りたいってことかな?」
「うん。それもそうなんだけど、美香の大学前の話とか知らない?」
友美の顔つきが少し変わったのが、なんとなくわかった。
しかし、友美はコーヒーを一口飲むといつもの笑顔に戻っていた。
「ひろむ。美香のことどんだけ知ってる?」
美香は笑顔のまま聞いてきた。
「え、何の話?」
「美香の好きな食べ物は?好きな季節は?美香の好きな動物は?」
そう聞かれたとき、
俺は答えることができなかった。
美香が話そうとしなかったのは地元や家族の話だけでなかった。
「あんた美香のことなんも知らないんだね。
美香は過去の話をすることをいつも嫌がってた。
でも、あんたはそれ以前の問題だよ。美香のこと知ろうとしなかったんでしょ。
こんな簡単な質問にも答えれない人に美香の過去を教えられないよ。」
友美はそう言って、立ち上がってどこかへ行ってしまった。
そうだ。違った。
美香が話そうとしなかったんじゃない。
俺が知ろうとしなかったんだ。
美香はおしゃべりでいつも話してた。
でも、いつも俺の話ばかり聞いてきた。
美香は俺のすべてを知っていた。
でも、俺は美香のことをなにも知らなかったのだ。