<3> 猫 DISH//
「あ!かわいいー!」
同棲し始め、美香とスーパーの帰り道、猫がいた。
見た感じ、どこかで飼われている感じではない。野良猫だろう。
「ねー、この子飼おうよー。」
「だめだよ。うちのアパート動物飼えないでしょ。」
「あーそっかー。残念。じゃあ、もーちょっと経ってまた引っ越したら猫飼おう!」
「はいはい。そーだな。」
「うん!やった!」
「残念がったり、すぐ喜んだり、美香って猫みたいだな。」
「それほめてんのー?」
「褒めてる褒めてる(笑)」
美香は俺と違っていつも笑ったり、喜んでたり、すねたと思ったらもう機嫌直ってたり、なんだかんだいつも楽しそうだった。
そんな美香と一緒にいるだけで楽しかった。
でも、美香には少し不思議な部分があった。
それが何かはわからない。
ふとしたとき、なにか悲しいげな顔をしていた時があった。
でも、あまりそれを気にしたことはなかった。
いや、気づいてはいけないと思っていたのかもしれない。
だから、その美香のもう一つの顔について探ろうとは思わなかった。
そのこともそうだが、俺は美香について知らないことが多い。
思い返せば、美香は自分のことについてあまり話そうとしなかった。
自分の家族の話、地元の話。
美香と生活を共にしていたのに、自分は美香のことあまり知らなかった。
美香と別れてもう関係ないのに、俺は美香について知りたくなった。
美香のもう一つの顔を。